トップ > 研究内容 > アルミニウム合金の組織制御
展伸用アルミニウム合金は大別すると「熱処理型合金」と「非熱処理型合金」の2種類に分けることができる.
熱処理型合金は時効熱処理によって硬化するCuやMg+Si,Zn+Mgなどを含むような合金系で,それぞれ2000系,6000系,7000系に属する.
こうした合金系では母相に整合な析出物を高密度微細に析出させることで硬さの向上が望める.
一方,非熱処理型合金は時効硬化しない合金であり,1000系(純Al),3000系(Al-Mn系),4000系(Al-Si系),5000系(Al-Mg系)がある.
こうした合金系では母相に非整合な析出物が出現するが,その分散状態は再結晶組織や加工性へ大きく影響を及ぼす.
このため,析出物の種類・サイズ・形態といった析出組織の制御は合金の特性を決める重要なものである.
Al-Mg-Si合金ピーク時効材の析出組織.
{100}面に沿った針状の析出物のため,直交した針状もしくは点状(析出物の断面)が見える.
Al-Mn-Mg合金の均質化処理条件による析出組織変化.
左上の鋳造まま材を同一温度,同一保持時間で均質化したものだが,昇温速度と冷却速度によって析出組織は様々に変化する.
鋳造材にはリサイクルの過程でFeが混入する.
Feは合金の機械的性質,特に靭性を損ねるため1 wt%以下にすることが求められており,現在は新地金を投入することで濃度を下げている.
Feが混入したAl-Si系合金鋳造材の組織.
濃い灰色に見える粗大板状な晶出物(鉄系化合物)が割れの起点となるため,合金の靭性を著しく損ねる.
この鉄系化合物を無害化するプロセスとして,当研究室では加工半溶融成型(DSSF)プロセスを提案している.
このプロセスはまず,合金に圧縮ひずみを加えて鉄系化合物を粉砕した後,半溶融温度へ昇温し加圧鋳造するものとなっている.
Feが混入したAl-Si系合金DSSF材の組織.
濃い灰色に見える粗大板状な晶出物(鉄系化合物)が粉砕されており,初晶α-Alも球状となっている.
これによって鉄系化合物が微細化し靭性に対して無害化されているだけでなく,初晶α-Alが球状化したことでさらなる延性の向上が期待される.